20世紀美術の探求者アルベルト・ジャコメッティ-矢内原伊作とともに 神奈川県立近代美術館 葉山
  この展覧会は、20世紀美術の類い稀な探求者であるアルベルト・ジャコメッティの全貌を紹介し、そのモデルであり記録者でもある日本人哲学者・矢内原伊作との交流に焦点を合わせたものとして、パリのアルベルト&アネット・ジャコメッティ財団との共催で開催されるものです。
  目に映るものを「見えるとおりに」表わす。簡単そうに思えて、実際には不可能なほど難しい、このただひとつのことを、ジャコメッティ(1901―1966)は、生涯をかけて追求していきました。針のように細い彫刻像、灰色の画面から静かに現われてくる人物。彼の探求のさなかに形になったそれらの作品は、20世紀美術のなかでもひときわ個性的で、ジャコメッティの存在を類例のない独自のものとしています。
  この展覧会は、ジャコメッティの没後アトリエに残されていたいくつもの未発表作品と、彫刻だけにとどまらず、多くの油彩画とデッサンをあわせて総計140点を越す作品、さらに、新たに発見された様々な資料によって、ジャコメッティの全貌を見渡すものです。
(作品の画像はジャコメッティ展共催ホームページでご覧いただけます)
 
 
アルベルト・ジャコメッティ
  アルベルト・ジャコメッティ(1901−1966)は、スイスに生まれ、パリで生涯の制作活動を行った、彫刻家・画家であり、非常に優れた素描家でもありました。
  父は、スイス印象派の最も重要な画家だったジョヴァンニ・ジャコメッティ。アルベルトは父のアトリエで、幼い頃から絵を描き彫刻をつくります。今回の出品作のうち、最も早い時期の作品は、わずか10歳の時に葛飾北斎の浮世絵を模写したもので、これは後に矢内原伊作に贈られ、現在は神奈川県立近代美術館の所蔵となっています。
 
 
矢内原伊作
  矢内原伊作(1918−1989)は、実存主義のサルトルなどを研究した哲学者であり、また、様々な芸術家についての著述を多く残しました。特に、パリ留学中に知り合い、モデルをつとめることとなったジャコメッティについては、大小約60もの文章を発表しており、日本でこれほどジャコメッティが広く知られるようになったのは、矢内原の精力的な文章発表と無縁ではないでしょう。
  1956年10月、哲学研究のための2年間のパリ留学が終わる間際、矢内原伊作は知り合って一年になるジャコメッティに挨拶に行きました。「君をちょっと描こう」と言われ、留学の良い記念になると喜んで彼の前に坐ります。「ちょっと」は、72日間になり、矢内原は何とか工面して何度も帰国を延期しました。矢内原の有名な著作『ジャコメッティとともに』でよく知られる、二人の冒険の始まりです。大学で教えていた矢内原は、翌57年の夏休み、59年、60年、61年の夏にもジャコメッティに招かれてパリに出かけ、ポーズを続けます。その日数は延べ230日に及び、ジャコメッティの制作に新たな展開をもたらしました。
 
 
ヤナイハラの肖像と矢内原伊作資料の公開
  矢内原をモデルにした作品は、今まであまり多く知られていませんでしたが、今回、アルベルト&アネット・ジャコメッティ財団の協力による初公開の肖像画も含め、全部で9点の油彩肖像画と2点の石膏彫刻が公開されます。中でも、パリのポンピドゥーセンター所蔵の油彩《ヤナイハラの肖像T》は、神奈川県立近代美術館でだけの公開となりました。更に、矢内原家に残された素描、そして矢内原の親友である詩人・仏文学者の宇佐見英治がジャコメッティから直接贈られた彫刻などが、現在神奈川県立近代美術館所蔵となっており、これらも一挙に出品されます。
  矢内原はアトリエでのポーズの様子を小さな手帖に細かく書き記し、それをもとにして「ジャコメッティとともに」をはじめとする多くの文章を発表しています。そして、ジャコメッティとの間にたくさんの書簡も往復していました。今回は、矢内原自身が残した手帖や、アトリエを撮影した写真、ジャコメッティとの間に交わされた書簡などの資料も、豊富に展示されます。
 
 
「アルベルト・ジャコメッティ―矢内原伊作とともに」関連講演会のご案内
関連講演会(要申込・受講無料)
 
  第1回 6月4日(日曜)「ジャコメッティと現代(仮題)」
  講師:ヴェロニク・ヴィージンガー
  (アルベルト&アネット・ジャコメッティ財団,パリ ディレクター)・通訳付
 
  第2回 6月25日(日曜)「矢内原伊作とジャコメッティ」
  講師:武田昭彦(美術評論・ジャコメッティ研究)
 
  第3回 7月1日(土曜)「ジャコメッティ・人間存在の探求」
  講師:山梨俊夫(神奈川県立近代美術館 館長)
 
  第4回 7月22日(土曜)「鼎談 ジャコメッティ」
  講師:小林康夫(東京大学教授)・松浦寿夫(東京外国語大学教授)・山梨俊夫(神奈川
  県立美術館 館長)
 
時間・場所:午後2時−4時、葉山館講堂にて
定員:各回70名(申込先着順)
申込方法:希望の参加日(第1回・2回・3回・4回)・参加者の氏名・住所・電話番号・ファックス番号を明記の上、各講演会の前日までにファックスでお申し込み下さい。定員に達し次第締切りとなります。
申込先:Fax.046-875-2968 神奈川県立近代美術館「ジャコメッティ展講演会」係
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