西雅秋展  空と大地と記憶の造形 神奈川県立近代美術館 葉山
《地溝1993-2005》 1993-2005年
photo by LIGHT ON
《帰巣》 2005年 photo by LIGHT ON
《innocence-境界》 2005年 photo by LIGHT ON
 巨大な鉄の円環が土くれを付着させて錆びていく。あるいは、かつてそこに暮らした犬は死んで主のいない犬小屋が積み重なっている。大きな坩堝が鉄と銅で鋳抜かれて異なる色合いを見せて並ぶ。積み上げられた空の鳥かごで携帯電話が着信を待っている。 西雅秋の展覧会場では、物がそれぞれの語り口で語りかけます。
 西雅秋(1946- )は、人間と物、人間と自然のかかわりを美術的な行為に取り込むことを制作の軸にして、日本はもとより国際的に広く活躍しています。銅や鉄といった物質のあり方と変化、それらを大気にさらし、水に浸し、大地にうずめて、自然の手がどのように物の変成をつかさどっていくか。人間とともに流れながら生のリズムとは異なった自然の時間を見据える西雅秋は、その物質の変成を提示することを自らの仕事の根幹としています。また、生活の痕跡や死の印を抱え込みながら、人間の生の記憶を、人間とかかわる物の集積を通して形にしていくことも、この美術家の重要なテーマです。
 本展は、1970年代後半から今にいたるまでの25年間、西雅秋が、自然の変成と世界の変容をじっと見詰め、外の世界と交差する自身の内部に芽生え育った意識を、作品という形にしていった軌跡を紹介します。今回出品される約12点の作品はどれもが、物質との関係のなかでしか生きられないわれわれの現実に隠された物の実相を露わにし、 われわれの時代を批評し、 われわれの行方を暗示しもするでしょう。と同時に、今回の展覧会では、海のほとりの美術館の庭にある《大地の雌型より》に、葉山最後の木造舟がコンクリートで抜かれて加わります。この作品は、葉山の土地にちなんで、海に生きる人々の生に共感を寄せその生活を記憶するためにつくられたものです。西雅秋の手で、作品のなかに、土地の記憶が生きつづけていきます。
 本展が、物の意味、物と係わって生きる意味を考えるきっかけになればと願っています。
 
 
座談会

日時: 11月27日(日曜日) 午後2時より
会場: 神奈川県立近代美術館 葉山 講堂
 パネリスト: 西雅秋
酒井忠康(世田谷美術館長・当館顧問)
山梨俊夫(当館館長)
※講聴無料・当日先着順(定員70名)
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