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ところで、もうひとりの画家佐野繁次郎が、佐伯祐三と出会うことで、画家になったことが知られています。二人が大阪から東京に出てきてからも交友が続いていたことも確認されています。ただ、すぐに、佐伯祐三がフランスに渡り、30歳の若さで病死したのに対し、佐野繁次郎は絵を描きながら、文学にも手を染め、どちらの道を進むか悩み、その後、本格的な絵画活動をスタートさせることになります。それゆえ、いままで二人の芸術についてかかわりを持たせて考えることがほとんどありませんでした。しかし、二人の絵画作品に見られる文字の絵画的な扱いについては深いかかわりがあるように思われます。佐伯祐三の絵画芸術における文字の重要性は画面を見ても明らかです。その、強烈な印象を、佐野繁次郎は、佐伯の作品を通して、肌で感じ取ったことでしょう。佐伯祐三が亡くなったときに佐野繁次郎は追悼文を書いていますが、その文章でも、その文字をうまく使った絵画から音楽性が顕著であることを指摘しています。二人に見られる文字の絵画的な表現が、彼らの芸術作品にどのような意味を持っていたのか、この展覧会を通して、考えてみたいと思います。そして、日本近代洋画における文学や文字との親近性を垣間見ることにより、美術は美術、文学は文学と区別をするのではなく、総合的な視野に立って芸術が生み出されていることを、今展で感じ取っていただきたいと思います。 |
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