神奈川県立近代美術館 葉山
パリのエスプリ 佐伯祐三と佐野繁次郎展    洋画家佐伯祐三(1898-1928)と佐野繁次郎(1900-1987)は、ともに大阪に生まれ、大阪で青春時代を過ごしました。佐伯祐三といえば、パリの下町を激しい筆遣いで、時にはやさしく抒情的に描き出した風景を得意とした画家として知られています。佐伯祐三は、フランスという風土に魅せられ、次々と傑作を生み出していきました。そして、その絵の中に壁だったりポスターだったりしますが、文字が書かれていきます。文字が文字として書かれているだけではなく、さらに、文字が絵画化されていくのです。では文字は、完全に絵画の一部になってしまったのかというとそうではありません。ぎりぎりのところで何かを伝えようとしているのです。
佐伯祐三《レ・ジュ・ド・ノエル》1925年
油彩・カンヴァス
和歌山県立近代美術館
佐野繁次郎《アトリエ》1939年
油彩・カンヴァス
神奈川県立近代美術館
   ところで、もうひとりの画家佐野繁次郎が、佐伯祐三と出会うことで、画家になったことが知られています。二人が大阪から東京に出てきてからも交友が続いていたことも確認されています。ただ、すぐに、佐伯祐三がフランスに渡り、30歳の若さで病死したのに対し、佐野繁次郎は絵を描きながら、文学にも手を染め、どちらの道を進むか悩み、その後、本格的な絵画活動をスタートさせることになります。それゆえ、いままで二人の芸術についてかかわりを持たせて考えることがほとんどありませんでした。しかし、二人の絵画作品に見られる文字の絵画的な扱いについては深いかかわりがあるように思われます。佐伯祐三の絵画芸術における文字の重要性は画面を見ても明らかです。その、強烈な印象を、佐野繁次郎は、佐伯の作品を通して、肌で感じ取ったことでしょう。佐伯祐三が亡くなったときに佐野繁次郎は追悼文を書いていますが、その文章でも、その文字をうまく使った絵画から音楽性が顕著であることを指摘しています。二人に見られる文字の絵画的な表現が、彼らの芸術作品にどのような意味を持っていたのか、この展覧会を通して、考えてみたいと思います。そして、日本近代洋画における文学や文字との親近性を垣間見ることにより、美術は美術、文学は文学と区別をするのではなく、総合的な視野に立って芸術が生み出されていることを、今展で感じ取っていただきたいと思います。
佐伯祐三《広告のある門》1925年
油彩・カンヴァス
和歌山県立近代美術館
佐野繁次郎《パリの街頭スケッチ》制作年不詳
鉛筆・紙
神奈川県立近代美術館
座談会「佐野繁次郎と佐伯祐三をめぐって」
  鹿海信也氏(元文化庁文化部長・佐野繁次郎の甥)
  聞き手:橋秀文(担当学芸員)
日時 2007年5月13日(日曜)午後2時~4時
定員 70名(申込先着順) 参加無料
申込方法 参加者の氏名・住所・電話番号・ファックス番号を明記のうえ、座談会の8日前までにファックスでお申し込みください。
申込み先 Fax.046-875-2968
神奈川県立近代美術館
<佐伯祐三と佐野繁次郎展 座談会>係
ギャラリートーク
4月18日(水曜)、5月16日(水曜)
各日とも午後2時~2時30分
佐伯祐三略年譜
佐伯祐三《自画像》1917年頃
油彩・カンヴァス
愛知県美術館
1898年 4月28日、現在の大阪市北区中津に生まれる。
1912年 大阪府立北野中学校に入学。
1915年 油絵を描き始める。
1917年 大阪府立北野中学校を卒業し、上京する。
1918年 東京美術学校西洋画科に入学。
1921年 現在の新宿区中落合にアトリエ付の家を新築する。
1924年 1月、パリに到着。
ヴラマンクから自作を「アカデミスム」と批判される。
1926年 3月、帰国。9月、第13回二科展で二科賞を受賞。
1927年 8月、パリに到着。
この頃より《カフェ・レストラン》の連作が始まる。
1928年 8月16日、パリで死去。
佐野繁次郎略年譜
佐野繁次郎《自画像》制作年不詳
油彩・カンヴァス
神奈川県立近代美術館
1900年 1月12日、現在の大阪市東区南久宝寺町に生まれる。
1915年 この頃、油絵具と画架を買ってもらう。
佐伯祐三と知り合うのもこの頃か。
1920年頃 東京の滝野川に大石七分が建てたアトリエつきの家を借りる。
1928年 《三田文学》に佐伯祐三の追悼記事を寄せる。
1929年 二科展に初出品する。
1930年 同人雑誌《作品》の表紙やカットを担当する。
1937年 8月、渡仏。
1939年 夏ころ、帰国。
1947年 二紀会展に出品する。
1951年 渡仏。
1953年 帰国。
1954年 タウン誌《銀座百点》の表紙を1969年7月号まで担当する。
1987年 12月2日、死去。

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