展覧会
福田尚代 あわいのほとり
企画概要
美術家・福田尚代(ふくだ・なおよ/1967–)は、「世界は言葉でできている」という独自の思索を、言葉と美術によって探求してきました。創作の根幹にある言葉との出会いは幼少期に遡り、本のページに並ぶ文字の組み合わせがひとつ変わるだけで、別な景色が生まれるその移ろいに魅了されたといいます。そこから言葉を小さな「粒子」として捉え、ひとつひとつの言葉を分解し、並び替えることで未知の世界に触れる手がかりを見いだします。
始めからも終わりからも同じ文字列で読める「回文」を意識し始めたのは、東京藝術大学に在学の頃で、同大学院修了後、1994年から約6年間のアメリカ滞在を経て本格的に手がけていきます。これまでに発表した回文集は、『ひかり埃のきみ』(2016年、平凡社)、『わたしたち、言葉になって帰ってくる』(2020年、私家版)など10冊余を数えます。
福田はこうした言葉の表現と併行して、造形制作においても独自の個性を発揮してきました。本や栞ひも、手紙、鉛筆、消しゴムなど、いずれも言葉に関わり、人の手に触れられた記憶を宿す物を素材に彫刻を施します。削り、折り、切り抜き、ほどき、糸で縫い、針穴を穿たれた物たちは元々の姿を失い、やがて小さな「粒子」となって消えゆくかのようです。こうした存在のはかなさ――生と死の「あわい」に光をあててきた福田の制作は、「アーティスト・ファイル2010―現代の作家たち」(国立新美術館、2010年)や「フラグメント―未完のはじまり」(東京都現代美術館、2014年)をはじめ、近年では「ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」(DIC川村記念美術館、2020年)、「雰囲気のかたち―見えないもの、形のないもの、そしてここにあるもの」(うらわ美術館、2022年)、「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」(東京都庭園美術館、2022年)などのグループ展を通して高く評価されています。
本展は、初期から現在に至る主要な作品によって福田の創作を紹介するとともに、会場の空間を取り込んだインスタレーションによって構成する画期的な個展となります。
展覧会のみどころ
1.福田の初期から新作までを展示
初期から新作を含む主要な作品と併せて、書き下ろしの回文により、美術と言葉を往還する福田の創作世界を紹介します。
2.福田の作品と回文によるインスタレーション
美術館の展示空間を取り込んだインスタレーションをお楽しみいただけます。とりわけ、近年、作家が関心を寄せている「あわい」をテーマにした《漂着物/ひとすくい》や《漂着物/波打ち際》を展覧します。
開催概要
- 会場
神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
- 会期
2026年2月21日(土曜)-5月17日(日曜)
- 休館日
月曜(2月23日、5月4日を除く)
- 開催時間
午前9時30分-午後5時(入館は午後4時30分まで)
- 観覧料
一般700(600)円
20歳未満・学生550(450)円
65歳以上350円
高校生100円
*( )内は20名以上の団体料金です。
*中学生以下の方と障害者手帳等、ミライロIDをご提示の方(および介助者原則1名)は無料です。ミライロIDについて、通信環境等の影響によりタブレット端末等の画面で必要な情報が確認できない場合は、原本のご提示をお願いすることがあります。
*ファミリー・コミュニケーションの日(毎月第1日曜:3月1日、4月5日、5月3日)は、18歳未満のお子様連れのご家族は割引料金(65歳以上の方を除く)でご覧いただけます。また同日は会話を楽しむ日「オープン・コミュニケーション・デー」となりますので、小さなお子様連れの方も、遠慮なくご覧ください。
*その他の割引につきましてはお問い合わせください。
*最新情報と来館に際してのお願いは美術館ウェブサイト等をご確認ください。
- 主催
神奈川県立近代美術館
- 県立美術館・博物館の割引
下記美術館・博物館の有料観覧券の半券提示で、観覧料が割引になります(入館日から6か月以内、半券1枚につき1回限り有効)。
同じ施設へも適用可能です。一部の展示を除き、65歳以上の方と高校生の割引適用はありません。詳細は各施設にお問い合わせください。- 近代美術館 葉山 電話:046-875-2800
- 近代美術館 鎌倉別館 電話:0467-22-5000
- 金沢文庫 電話:045-701-9069
- 歴史博物館 電話:045-201-0926(2026年9月まで工事のため休館)
- 生命の星・地球博物館 電話:0465-21-1515
- 近隣館との相互割引
下記の施設の観覧券半券(観覧日から6か月以内)・年間パスポート(有効期限内)をお持ちの方は、当館の観覧料に割引が適用されます(1枚につき1回限り有効。65歳以上券を除く)。また、当館の有料観覧券の半券(観覧日から6か月以内)を下記で提示いただくと観覧料に割引料金が適用されます。
- 茅ヶ崎市美術館 電話:0467-88-1177
福田尚代 略歴
1967年埼玉県生まれ。1992年東京藝術大学大学院修了。1994年から2000年まで、アメリカ滞在。現在、埼玉県在住。
主な個展に、2012年「福田尚代展 あなたの船の往くところに」(横浜市民ギャラリーあざみ野/神奈川)、2013年「福田尚代 慈雨 百合 粒子」(小出由紀子事務所/東京)、2016年「コレクション 福田尚代 言葉の在り処、その存在」(うらわ美術館/埼玉)、2024年「ひとすくい」(Kanda & Oliveira/千葉)、2025年「福田尚代 日な曇り」(YOKOTA TOKYO/東京)。グループ展に、2010年「アーティスト・ファイル 2010―現代の作家たち」(国立新美術館/東京)、2014年「MOTアニュアル2014:フラグメント―未完のはじまり」(東京都現代美術館/東京)、2020年「開館30周年記念展:ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち」(DIC川村記念美術館/千葉)、2022年「雰囲気のかたち―見えないもの、形のないもの、そしてここにあるもの」(うらわ美術館/埼玉)、2022年「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」(東京都庭園美術館/東京)など。
作品紹介
-
福田尚代
《漂着物/ひとすくい/泉》より
2024–2026年 消しゴムに彫刻
作家蔵
撮影:髙橋健治 -
福田尚代
《漂着物/ひとすくい/泉》より
2024–2026年 消しゴムに彫刻
作家蔵
撮影:髙橋健治 -
福田尚代
《漂着物/ひとすくい/泉》より
2024–2026年 消しゴムに彫刻
作家蔵
撮影:髙橋健治 -
福田尚代
《翼あるもの/岬より『楽しみと日々』》
2022年 頁を折り込まれた書物
作家蔵
撮影:髙橋健治 -
福田尚代
《翼あるもの/岬より『楽しみと日々』ほか》
2003–2022年 頁を折り込まれた書物
作家蔵
撮影:髙橋健治 -
福田尚代
《書物の魂#02》
2013–2023年 ほぐされた本の栞ひも
東京都現代美術館蔵
撮影:坂田峰夫 -
福田尚代
《アイスハーケン、そしてアイリス》
2018–2024年 脱色されたハンカチに刺繍
個人蔵
撮影:坂田峰夫 -
福田尚代
《便箋 #01/1981年 秋/先輩(巡礼/郵便シリーズより)》
2009年 郵便物に刺繍
個人蔵
撮影:上野則宏 -
福田尚代
《夢ノート/袖の涙/泉 #01》
2023–2024年 夢ノートに着彩(色鉛筆)
個人蔵 -
福田尚代
《煙の骨》
2007–2013年 女性の名前が刻印された色鉛筆の芯の彫刻
うらわ美術館蔵
撮影:大谷一郎 -
福田尚代
《メッセージカード #02/トランプ(ハートの2)》
2025年 メッセージカードに刺繍
作家蔵
撮影:髙橋健治