展覧会
2025年度
若江漢字とヨーゼフ・ボイス
撮影されたボイスの記録、そして共振
若江漢字(わかえ・かんじ/1944–)は、1970年代のドイツ滞在を機にヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys/1921–1986)の芸術に共鳴し、彼と交流するなかで、ボイス作品をはじめとする現代美術の収集と展示など、自らの創作活動と並行して芸術と社会を結ぶ行為を続けてきました。ドクメンタ7でのアクションやアトリエ訪問時、来日の際などに若江がボイスを接写した記録、そしてドイツ内外で主要なボイス展を撮影した写真は、貴重な証言であると同時に若江の作家的視点を伝えます。多くが初公開となる記録写真と並行して二人の造形作品を展示し、両者の共通項と独自性を考察します。
Images: [左]若江漢字《時の光の下に II(死の島)》1989–2024年 作家蔵 /[右]若江漢字撮影「ヨーゼフ・ボイス ドクメンタ7でのアクション 1982年6月30日」© Wakae Kanji
没後10年 江見絹子
—1962年のヴェネチア・ビエンナーレ出品作品を中心に—
江見絹子(えみ・きぬこ/1923–2015)は、日本人女性として初めてヴェネチア・ビエンナーレ(第31回・1962年)に出品した画家です。1956年から日本でアンフォルメル旋風が吹く中、江見の作風も1958年には半抽象から高度経済成長の黎明期を反映した構築的な幾何学的抽象へ、その後1961年にその形体を文字通り「解消」し、1964年に「熱い抽象」へと目まぐるしく展開しました。ヴェネチア・ビエンナーレの出品作全点を中心に、没後10年となる江見の代表作を展覧します。
Image: 江見絹子《作品5》1962年 当館蔵
川口起美雄 Thousands are Sailing
川口起美雄(かわぐち・きみお/1951–)は、目に見えないものは描かず、目に見えるものを描いて誰も見たことがない風景を現出する作家です。川口の作品は、ウィーンで学んだテンペラ絵具と油絵具の混合技法で描かれています。ニュアンスに富んだ質感をもち、物語を想起させる作風は、しばしば詩に喩えられ、「読まれる絵画」とも称されます。本展では、1970年代に制作された初期作品から初公開となる新作までを展示し、半世紀に及ぶ創作の軌跡をたどります。
Image: 川口起美雄《机の上の旅》2025年 個人蔵
上田義彦 いつも世界は遠く、
上田義彦(うえだ・よしひこ/1957–)は、活動初期から自然や都市の風景、著名人のポートレイト、広告写真など幅広い分野で活躍を続けてきた写真家です。瞬間を捉える感性と卓越した技術で、時代とともに変化する作風でありながら一貫して普遍的な美を作品に込め、国内外で高い評価を得てきました。公立美術館で約20年ぶりの本展では、代表作や未発表の初期作品から最新作まで、自ら現像とプリントを手がけた約500点を通じ、その40年の軌跡を辿ります。
Image: 上田義彦《Quinault No.1》1991年 © Yoshihiko Ueda
これもさわれるのかな?
—彫刻に触れる展覧会Ⅱ—
2022年に開催した展覧会「これってさわれるのかな?」の第二弾です。コレクションを中心とした彫刻に実際に手で触れ、さまざまな形や質感などを体験することで「見る」だけではない作品の味わい方を探ります。(作品保護のため、美術館で用意する手袋を着用していただきます)
Image: 堀内正和《半分おちそう》1973年 当館蔵 撮影:佐藤新一
木茂(もくも)先生の挿絵考
併陳:近代の洋画
木茂(もくも)先生こと、明治美術の研究者で愛書家の青木茂(あおき・しげる/1932–2021)の旧蔵書として当館に収蔵された約1万冊の「青木文庫」を紹介する展覧会。2024年度に続く今回は、明治から昭和初期までの「挿絵」や「漫画」に関する書籍、雑誌、挿絵原画を特集します。これらと時代を合わせ、浅井忠(あさい・ちゅう/1856–1907)、黒田清輝(くろだ・せいき/1866–1924)、藤島武二(ふじしま・たけじ/1867–1943)、中澤弘光(なかざわ・ひろみつ/1874–1964)、岸田劉生(きしだ・りゅうせい/1891–1929)らによる近代洋画の名品を展示します。
Image: 中村不折《北斎鳥跡ヲ利用シテ立田川の図ヲ為ル》1908年頃 当館蔵(青木文庫)
日本画コレクション再発見と
片岡球子「蔦屋重三郎の浮世絵師たち」
当館の日本画コレクションから、館内では初公開となる作品や、約20年ぶりの出品となる作品を改めて紹介します。江戸時代前期の狩野探雪(かのう・たんせつ/1655–1714)の屏風《草木図》や、小泉淳作(こいずみ・じゅんさく/1924–2012)による鎌倉・建長寺の天井画《雲龍図》の下図など、ぜひこの機会にご覧ください。また、特集として片岡球子(かたおか・たまこ/1905–2008)の〈面構(つらがまえ)〉シリーズから、蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう/1750–1797)に関連する浮世絵師たちを描いた屏風を展示します。
Image: 小泉淳作《雲龍図》(建長寺天井画)小下図 1997年 当館蔵
中西夏之 光の条件
中西夏之(なかにし・なつゆき/1935–2016)は、絵画を空間や身体との関係性の中で独自に実践した戦後日本を代表する画家のひとりです。今年は、鎌倉新館で発表した晩年の代表的インスタレーション作品〈着陸と着水〉シリーズの第1作から30年を迎えます。本展では、新収蔵された同シリーズ第2作となる大作《紗幕孔穿》を中心に、〈二ツのリンゴ〉などを当館で初展示し、この画家における絵画の成り立ち、絵画が生む場、その視座を探ります。
Image: 中西夏之《紗幕孔穿》展示風景 1997年 撮影:後藤充 © Natsuyuki Nakanishi
岩竹理恵+片岡純也×コレクション
重力と素材のための図鑑
2013年よりユニットでの作品発表を始めた岩竹理恵+片岡純也(共に1982-)。イメージの連想によって絵画の空間性を思索する岩竹の平面作品と、身の回りや自然の現象から着想を得た片岡のキネティック作品とを、インスタレーションとして構成することを通して、身体性や時間性を喚起する新たな視覚体験を促してきました。本展は、曼荼羅、大津絵、鯰絵、茶器などの日本美術を中心に作家と学芸員が作品を選定し、当館のコレクションに新たな光をあてる企画です。対象を他のものになぞらえ、そこに実在しないものをあるように表現する「見立て」や、浮世絵の画中画などに示される絵画の「入れ子」構造など、日本美術に見られる造形的な特色と魅力を、遊び心のあるユニークな手法を通して探究します。
Images: [左]岩竹理恵《Bodyscape》2024年 作家蔵/[右]俵屋宗達《狗子図》江戸時代 当館蔵(木下翔逅コレクション)