展覧会
葉山館 開催中・これからの展覧会
上田義彦 いつも世界は遠く、
上田義彦(うえだ・よしひこ/1957–)は、活動初期から自然や都市の風景、著名人のポートレイト、広告写真など幅広い分野で活躍を続けてきた写真家です。瞬間を捉える感性と卓越した技術で、時代とともに変化する作風でありながら一貫して普遍的な美を作品に込め、国内外で高い評価を得てきました。公立美術館で約20年ぶりの本展では、代表作や未発表の初期作品から最新作まで、自ら現像とプリントを手がけた約500点を通じ、その40年の軌跡を辿ります。
Image: 上田義彦《Quinault No.1》1990年 © Yoshihiko Ueda

若江漢字とヨーゼフ・ボイス
撮影されたボイスの記録、そして共振
若江漢字(わかえ・かんじ/1944–)は、1970年代のドイツ滞在を機にヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys/1921–1986)の芸術に共鳴し、彼と交流するなかで、ボイス作品をはじめとする現代美術の収集と展示など、自らの創作活動と並行して芸術と社会を結ぶ行為を続けてきました。ドクメンタ7でのアクションやアトリエ訪問時、来日の際などに若江がボイスを接写した記録、そしてドイツ内外で主要なボイス展を撮影した写真は、貴重な証言であると同時に若江の作家的視点を伝えます。多くが初公開となる記録写真と並行して二人の造形作品を展示し、両者の共通項と独自性を考察します。
Images: [左]若江漢字《時の光の下に II(死の島)》1989–2024年 作家蔵 /[右]若江漢字撮影「ヨーゼフ・ボイス ドクメンタ7でのアクション 1982年6月30日」© Wakae Kanji

没後10年 江見絹子
—1962年のヴェネチア・ビエンナーレ出品作品を中心に—
江見絹子(えみ・きぬこ/1923–2015)は、日本人女性として初めてヴェネチア・ビエンナーレ(第31回・1962年)に出品した画家です。1956年から日本でアンフォルメル旋風が吹く中、江見の作風も1958年には半抽象から高度経済成長の黎明期を反映した構築的な幾何学的抽象へ、その後1961年にその形体を文字通り「解消」し、1964年に「熱い抽象」へと目まぐるしく展開しました。ヴェネチア・ビエンナーレの出品作全点を中心に、没後10年となる江見の代表作を展覧します。
Image: 江見絹子《作品5》1962年 当館蔵

内間安瑆・俊子展
日系移民の二世として米国に生まれた内間安瑆(うちま・あんせい/1921–2000)は、1940年に日本に留学し、画家を志すようになります。戦後、恩地孝四郎(おんち・こうしろう/1891–1955)や棟方志功(むなかた・しこう/1903–1975)の知遇を得て創作版画の道に没頭すると、幾度かの変遷をとげながら、「色面織り」と呼ぶ独自の木版技法を深化させた連作〈Forest Byobu〉に至りました。幻想的なアッサンブラージュで知られた妻・俊子(うちま・としこ/1918–2000)にも焦点をあてながら、イサム・ノグチ(1904–1988)ら関連作家の作品とともに、二人の豊かな創作世界を回顧します。
Image: 内間安瑆《Forest Byobu (Screen) B》1978年 個人蔵

たいせつなものII—近年収蔵の彫刻・立体作品から—
近年収蔵された彫刻・立体作品の中から、吉田芳夫(よしだ・よしお/1912–1989)、村岡三郎(むらおか・さぶろう/1928–2013)、山本正道(やまもと・まさみち/1941– )、安田侃(やすだ・かん/1945– )、鷲見和紀郎(すみ・わきろう/1950– )、下川勝(しもかわ・まさる/1950– )、黒川弘毅(くろかわ・ひろたけ/1952– )、矢野美智子(やの・みちこ/1956– )、ホセイン・ゴルバ(Hossein Golba/1956– )などの彫刻・立体作品を展覧します。具象から抽象まで、さまざまな三次元の「かたち」が表す存在感をお楽しみください。
Image: 黒川弘毅《スパルトイ no.20》1985-86年 当館蔵 撮影:山本糾