展覧会
開催中・これからの展覧会
山室眞二の薯版画〈かまくら博物誌〉
併陳 コレクション 暮らしの中で
山室眞二(やまむろ・しんじ/1939–)はじゃがいもを版とする薯版画を独学で制作し深化させてきただけでなく、装幀や造本なども多数手がけています。本展ではこれまでの作品に加え、作家と交流のある志村ふくみ(しむら・ふくみ/1924–、染織家、随筆家・人間国宝)の言葉を取り上げた新作《百葉筥》も展示します。また、所蔵品の中から麻生三郎(あそう・さぶろう/1913–2000)などがそれぞれの日常から題材をとった作品も併せて紹介します。
Image: 山室眞二《ツバメ》2025年 作家蔵 撮影:鈴木静華
もはやない国のかつてない光
東ドイツの女性写真家たち
第二次世界大戦後、東西の国家に分断されたドイツ。1990年の再統一によって消滅したドイツ民主共和国(東ドイツ)で女性が写真家としてキャリアを形成し、自身の芸術表現としても優れた作品を手がけたことは、ドイツ写真史において近年まで見過ごされてきました。ベルリンのラインベックハレン財団が管理するスヴェン・ヘアマン氏のコレクションを中心に、当時、あるいは現在も重要な作家として活動する15人の女性写真家を紹介する本展は、かつて存在した国で社会と日常の光景に注がれた繊細な視線と確かな技術に注目し、それらの作品が果たした役割を考えるものです。
Image: ジビレ・ベルゲマン《アネッテとアンゲラ、ルストガルテン、ベルリン》1982年
© Estate Sibylle Bergemann. Courtesy Loock Galerie, Berlin
「鎌倉近代美術館」と昭和の美術
1951年、当館は鎌倉市の鶴岡八幡宮境内に開館しました。坂倉準三(さかくら・じゅんぞう/1901–1969)が設計したこの建物は、「鎌倉近代美術館(カマキン)」の愛称で親しまれ、当館としての活動を終えた後、重要文化財に指定されました。昭和100年を記念して、戦後の名建築のひとつである神奈川県立近代美術館 鎌倉の関連資料とともに、松本竣介(まつもと・しゅんすけ/1912–1948)、鳥海青児(ちょうかい・せいじ/1902–1972)、山口薫(やまぐち・かおる/1907–1968)、 向井良吉(むかい・りょうきち/1918–2010)など、同館で紹介された同時代の作家たちによる名品を展示します。
Image: 松本竣介《建物》1935年 当館蔵
銅版画家・駒井哲郎
掌上にひろがる星座のように
日本の版画史に重要な足跡を残した銅版画家・駒井哲郎(こまい・てつろう/1920–1976)。世田谷美術館の福原義春コレクションを中心に、これまで紹介する機会の少なかった初期の油彩画や、初公開となる童話『夢を追う子』の挿絵原画などを展示します。駒井が関心を寄せ、影響を受けたオディロン・ルドンをはじめとする国内外の作家の作品、銅原版、制作道具、写真などを通し、多岐にわたる創作活動と、その人間像に迫ります。
Image: 駒井哲郎《Le Rêve(星月夜[夢No.3])》1950年 世田谷美術館(福原義春コレクション)©Ari Komai 2026/JAA2600043
たそかれ、かはたれ
―現代美術における“翳”
「たそかれ(黄昏)」そして「かはたれ(彼は誰)」は、光と闇の境がゆるやかに溶け合い、ものの輪郭が揺らぐ時間帯を指す古語です。そうしたものごとがうつろう際の〈翳(かげ)〉の気配に着目し、20世紀美術に見られる不確かな像や感覚を辿ります。柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう/1922–2024)の古布によるコラージュ作品〈夜の絵〉、光のはざまに佇む岡崎和郎(おかざき・かずお/1930–2022)の《Hisashi》、杉本博司(すぎもと・ひろし/1948–)や森山大道(もりやま・だいどう1938–)の写真に刻まれた光と影。近年収蔵した作品も多く含めて、さまざまなあわいに立ち現れる表現を紹介します。
Image: 柚木沙弥郎《夜の絵(16)》2005年 当館蔵
ポーランド・ポスター2
銅版画家渡辺千尋旧蔵品から
ポーランド・ポスターの国際的評価を認識していた銅版画家の渡辺千尋(わたなべ・ちひろ/1944–2009)は、1989年の東欧革命直後にポーランドを訪問して以来、ポスターの収集を続けました。250点を数えるそのコレクションは遺族から寄贈され、当館がすでに所蔵していた295点と合わせて、ポーランドのポスター史を概観する上で重要なコレクションを形成しています。渡辺千尋旧蔵品から、ミェチスワフ・グロフスキ(1941–2011)やスタシス・エイドリゲヴィチウス(1949–)など、革命前後に活躍したポスター作家の作品約70点を紹介します。
Image: スタシス・エイドリゲヴィチウス《ヤン・ヴィルコフスキ 悲しみと喜びについてのたとえ話》1992年 当館蔵
松本陽子 宵の明星を見た日
松本陽子(まつもと・ようこ/1936–)は、1950年代後半から抽象絵画を追求し、1960年代にアメリカで抽象表現主義とアクリル絵具に出会ったことで、光と色に満ちた唯一無二の平面表現を展開しました。1990年代後半からはふたたび油彩画に取り組み、現在も精力的な制作を続けています。近年国際的な再評価の著しい松本の70年を超える創作の軌跡を、最初期から現在に至る代表作、そして本展に向けて描かれた新作で展覧します。
Image: 松本陽子《私的植物図鑑》2024年 作家蔵 Courtesy Hino Gallery
マルク・シャガール『ラ・フォンテーヌ寓話集』
マルク・シャガール(1887–1985)は、帝政ロシア領のヴィテプスク(現在のベラルーシ共和国)のユダヤ人家庭に生まれました。ロシア革命や戦争による苦難により、ヨーロッパ各地やアメリカを流浪しながらも、失われた故郷に深いまなざしを注ぎ続けました。『ラ・フォンテーヌ寓話集』は、画商のアンブロワーズ・ヴォラールと出会い、パリで制作した銅版画集です。フランスの国民的文学を題材にしたこの作品には、物語の真髄が国籍や言語の境界を越え、モノクローム独自の詩情を湛えて描かれています。
当館の望月冨昉コレクションから全100点を前後期に分けて紹介します。
Image: マルク・シャガール『ラ・フォンテーヌ寓話集』より《6. 男と鏡に映るその姿》1927–30年制作/1952年刊 当館蔵(望月冨昉コレクション)
深川遙想 伊東深水と関根正二
伊東深水(いとう・しんすい/1898–1972)と、関根正二(せきね・しょうじ/1899–1919)は、東京市深川区(現・東京都江東区)で育った幼なじみです。画家を志したふたりは、関根が20歳で夭折するまで、刺激を与え合いながら親しく交流しました。1910年代に描かれた伊東深水の初期作品を初公開し、国民的画家の知られざる若描きの作品に光をあてるとともに、関根正二の代表作を展示し、ふたりが互いに及ぼした影響を辿ります。
Image: [左]関根正二《農夫》1916年;[右]伊東深水《蓮にバッタ》1916年 ともに当館蔵
須田悦弘展
須田悦弘(すだ・よしひろ/1969–)は、本物と見まがうほど精巧に彫り上げた草花を展示空間に配置し、その空間全体を作品とすることで、国内外で多くの展示を行ってきました。見慣れた草花が展示室に生え/生けられたようなその姿は、自然と美術を混交させ我々の知覚を揺さぶるほどの静かな存在感をまとっています。
本展では、葉山館周辺に見られるさまざまな植物をモチーフにした作品を含む新作を中心に展示します。海と山に囲まれたこの葉山という町に位置する美術館に、自然と美術の境界線を超えた空間が現出することでしょう。また、作家自身が選んだ当館所蔵品とそれにまつわる新作をともに展示し、時代をも超えた未知の対話が生まれる場をつくりだします。
Image: 須田悦弘《椿》2026年 作家蔵
田中岑 色の軌跡 -《女の一生》から
1957年、第一回安井賞を受賞し、新進気鋭の作家として注目されていた田中岑(たなか・たかし/1921–2014)は神奈川県立近代美術館 旧鎌倉館の喫茶室に壁画《女の一生》を制作しました。本作は2016年の鎌倉館閉館に伴い葉山館の講堂前ホワイエへ移設され、今年で制作から70年、移設から10年を迎えます。画業の重要な起点である《女の一生》を主軸とし、所蔵作品を中心に田中の軌跡を辿ります。
Image: 田中岑《女の一生》1957年 当館蔵